企業でDXを実現するために、改めて一緒にDXの流れを見直してみましょう! 第4回:(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み-その3-

みなさん、こんにちは。DXアンバサダーの伊藤です。
DX推進ガイドラインの読み直しも、はや4回目となりました。

今回は、第3回で執筆した”DX推進ガイドライン-(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み”に記載されている
「DX推進のための体制整備」の続きとなります。

第3回では体制整備の概要を読み直しましたが、第4回では体制整備における「マインドセット」「推進・サポート体制」
「人材の育成・確保」について昨今の情勢を踏まえて綴っていきたいと思います。

簡単に(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み「DX推進のための体制整備」をおさらいしましょう。

DX推進のための体制整備では、

ー3.経営戦略やビジョンの実現と紐づけられた形で、経営層が各事業部門に対して、データやデジタル技術を活用して
新たなビジネスモデルを構築する取組について、新しい挑戦を促し、かつ挑戦を継続できる環境を整えているか。
(出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0 経済産業省)

と記載されています。
これは、DXの推進そのものが経営と密に関わっている事を表しており、
近年の代表的な情勢の変化として、コロナ過でその重要さが再確認される事となりました。

加えて昨今では、工数削減の結果が大きく出ているにもかかわらず、収益の向上や人財強化に繋がらず
経営層から成果として不十分と判断されるなど、自動化による成果報告の課題が多く聞こえてきています。

この事から、これからの自動化は導入を推進する外部企業も、ROIだけでなく
成果を経営課題と結び付ける支援能力が求められる時代になるでしょう。

では、一つずつ体制整備の詳細を読み直していきましょう。

一つ目は「マインドセット」です。
DX推進ガイドラインの記載を見ていきましょう。

マインドセット:各事業部門において新たな挑戦を積極的に行っていくマインドセットが醸成されるよう、
例えば、以下のような仕組みができているか。

- 仮説検証の繰返しプロセスが確立できている
   仮説を設定し、実行し、その結果に基づいて仮説を検証し、それに基づき新たに仮説を得る一連の繰返しプロセスが確立できていること
- 仮説検証の繰返しプロセスをスピーディーに実行できる
- 実行して目的を満たすかどうか評価する仕組みとなっている
(出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0 経済産業省)

このマインドセットは、PDCAサイクルなどの仮説検証を積極的に行う必要があること、そのための体制を整備することが記載されています。

しかし、この仮説検証が大きなミスリードとなってしまっている企業も多いのではないでしょうか。
確かに仮説検証を行うマインドセットは重要なのですが、最後に記載されている

 - 実行して目的を満たすかどうか評価する仕組みとなっている

この1行を検討せずに検証を行っている場合が非常に多いため、検証しても効果が出なかったり、
正しく評価されない事態が発生します。
私はこれまでの経験から、この1行がとても重要だと判断しています。

RPAロボットをはじめDXによる自動化の目的は、情報システムの目的である「業務効率化」や「全体最適化」とは違い、
新しい労働力による「経営課題の解決」にあり、そのための手段です。

経営課題を解決するのは「人」であり、その「人」をはじめとした関係者の手を空けたり、欲しい情報を代わりに取ってくるなど
経営課題解決に向けた延長線上の手段としてDXはあるべきと私は考えています。

そのためには、経営課題の解決を遂行するために
 ・遂行する経営課題
 ・成果報告する内容
 ・遂行する人材
 ・遂行する人材の手を空ける方法
など組織的な情報が必要になります。

ここで重要になるのが体制整備の二つめ「推進・サポート体制」です。
DX推進ガイドラインには下記が記載されています。

推進・サポート体制:経営戦略やビジョンの実現を念頭に、それを具現化する各事業部門における
データやデジタル技術の活用の取組を推進・サポートするDX推進部門の設置等、必要な体制が整えられているか。
(出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0 経済産業省)

ここまで順を追って読み直してみると、すんなり内容が入ってくる方も多いのではないでしょうか。

仮説検証の目的が「経営課題に対して成果が出せるか」である以上、
検討・導入段階で最終的な目的を見込んだ仮説検証を行うべきでしょうし、
それには経営戦略に対して行動を起こすべき上層部の推進と我々エンジニアの技術活用に向けた支援が必要になることでしょう。

すなわち、上層部が行動を起こさないことにはDXの成果は生まれにくいと言うことです。

では、上層部を動かすためにどうするか。
私はこれが最大の難問であり、DX推進ガイドラインが存在する意義と考えています。

経営課題に対して成果が出せる事実を小さいスコープで見せることができれば早いのですが、
外部からの支援だけでは難しく、内部で行うにもリテラシーの課題が立ち塞がります。

この場でこの難問を解くことはできませんが、
体制整備の三つ目「人材の育成・確保」では、ある程度答えが出ているようにも見えます。
早速DX推進ガイドラインの記載を見ていきましょう。

人材:DXの実行のために必要な人材の育成・確保(※)に向けた取組が行われているか。
- DX推進部門におけるデジタル技術やデータ活用に精通した人材の育成・確保
- 各事業部門において、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの取組をリードする人材、
  その実行を担っていく人材の育成・確保等
 ※ 人材の確保には、社外からの人材の獲得や社外との連携も含む
(出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0 経済産業省)

この人材とは、ITに精通した人材(エンジニアなど)とは違うと考えていただいた方がいいと思います。
もちろん知識の吸収は外部からでも構いませんが、経営戦略とDXを結び付けることができる人材を内部で育成し、
DXの取り組みをリード・実行する「役割」を作ることが必要だと捉えることで、
ここまで読み直してきた体制整備の内容が意味を持つことになります。

①経営課題を解決するために各事業部で新たな挑戦を積極的に行うマインドセット
②経営戦略やビジョンの実現を念頭に具現化する推進・サポート体制
③業務およびデジタルに精通しDXの取り組みをリード・実行する役割を持った人材

私はこの3点が「DX推進のための体制整備」であると読み直すことで、今多くの企業が行っている”外部企業による自動化”と
自動化のみで達成した成果の報告”が企業にとっての成果に結びつかない要因ではないかと考えています。

我々DXを推進するエンジニアは、従業員が”経営戦略とDXを結び付ける”ことができるよう支援し、
経営課題を解決するために”新しい労働力を利用できる体制”を企業内部にいかに作り、
目先の工数削減だけでなく上層部へ”経営課題を解決できるだけの効果がある”と証明するための体制整備を
行う必要があることを認識し、そのためにDXは何ができるかを見直す時期にあるのではないでしょうか。

少し長いお話になりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

今回は私個人が経験した内容が多く正しいことばかりではないかもしれませんが、
経営課題とDXの結び付けや内在化による内部推進力はDXによる変革に必要な考え方だと認識していますし、
効果だけでなく成果を考えた取り組みの先にDXの未来があると信じています。


次回は、「投資等の意思決定のあり方」と
「DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力」を読み直していきたいと思います。

>>第5回:(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み-その4-

ライター:伊藤 崇峰
2018年にDXを知り、RPA開発リーダーとして3年間様々なプロダクトで300以上の業務を自動化する。
自動化を行う中で培った幅広い知識・経験を活かすため、現在はDXコンサルタントやプリセールスを生業としながら、
DXアンバサダーとして活動している。