電子帳簿保存法改正について① 改正における変更点は?

 

こんにちは、営業の吉田です。

気が付けば2022年も6月に入りました。
新型コロナ感染症の状況も少し落ち着いてきたこともあり、
感染予防の継続が必要にせよ、経済面に目を向けることができる状況にもなってきていると
認識をしております。
この流れで少しずつ、以前の生活が取り戻せることができればと思っております。

さて、今回は今年1月1日より施行されております、
電子帳簿保存法の改正について少しお話をさせて頂きます。
こちらはペーパーレス(AI-OCR等)にも繋がるする話でありますので、ご確認いただければと思います。

 

改正以前

企業の活動における、請求書や契約書などの国税に関連する帳簿類・証憑類を、
電子で保存するための法律のことを「電子帳簿保存法」といい、
正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法の特例に関する法律」といいます。

こちらは、パソコンの普及により紙ではなく、電子データのやり取りや、電子取引が増えてきたことから、
電子データでの書面の保存を容認するため1998年に施行されました。

事務処理において紙業務が多数ある中効率化を期待されましたが、
以下の理由などがあり中々電子化が進まない状況となっておりました。

・紙の請求書をスキャンにおいて、スキャン実施者とは別の人物でのダブルチェックでの内容確認が必須である。
・データの改ざんを防ぐため、データにタイムスタンプを付与しなければならない
・電子保存を始める場合、開始2カ月前までに地域の税務署長への申請及び承認取得が必要である
・保存時に受領者の自署サインが必要

上記はなかなかのハードルの高さであり、電子化に移行する企業は少なくありました。
一部中途半端に電子保存するぐらいなら、結果紙に印刷の上、紙で一括管理されてる企業が多かったのではないでしょうか。

とはいえ、経済産業省も各企業に対しDX化を進めている状況でもあり、
今回帳票の電子化推進のため、現行法の改正を行われることになりました。

 

改正内容

では実際どのような変更があったのか確認しましょう。
2022年1月1日改正の電子帳簿保存法の主な変更点は以下となります。

それぞれ電子帳簿は以下の区分に分けられます。
1.電子帳簿等保存
  会計ソフトでの帳簿、そもそも電子的に作成した国税関連書類
2.スキャナ保存データ
  紙で受領、作成した書類の画像データ等
3.電子取引
  ネット上の電子メール・ブラウザからのダウンロード等で授受した取引情報等

こちらの3項目でそれぞれの主な変更点となります。

1.電子帳簿等保存
・税務署長への事前申請・承認手続きの廃止
 こちらは先にも上げております通り、電子保存開始に2か月前までに地域の税務署長への申請及び承認取得が
 必要でありましたが、こちらが廃止されました。
 特に保存前に申請が不要となり、すぐ保存開始ができるため利便性向上となっております。
・優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置の整備
 上記適用を受けようとする初年度においては、その過少申告加算税の5%軽減や青色申告特別控除(65 万円)の
 適用を受けようとする課税期間に係る法定申告期限までに、所轄の税務署長宛に、
 本措置の適用を受ける旨等を記載した届出書を提出する必要があります。
・最低限の要件を満たす電子帳簿における電磁的記録による保存
 改正前に比べ大幅に緩和された要件での電子帳簿等保存が認められるようになりました。
 
2.スキャナ保存データ 
・税務署長への事前申請・承認手続きの廃止
 こちらは前述と同様です。
・保存データのタイムスタンプ・検索要件の緩和
 タイムスタンプの付与期間がいままでは3稼働日以内でしたが、
 記録事項の入力期間と同様最長約2か月と概ね7営業日以内と緩和され、
 受領者等がスキャナで読み取る際の国税関係書類への自署が不要となるなど利便性向上となっております。
・適正事務処理要件の廃止
 適正事務処理要件とは、相互けん制、定期的な検査及び再発防止策の社内規程整備等のことをいいます(旧電帳法規則第3条5項4号)。
 前述の、「紙の請求書をスキャンにおいて、スキャン実施者とは別の人物でのダブルチェックでの内容確認が必須である。」
 のことを指しますが、こちらのスキャナ保存利用の障害となっていた部分が廃止となりました。
・不正があった場合の重加算税の加重措置の整備
 スキャナ保存が行われた国税関係書類に係る電磁的記録に関して、
 隠蔽又は仮装された事実があった場合には、その事実に関し生じた申告漏れ等に課される重加算税として、
 10%加重される措置が整備されました。不正に対する罰則が明記されたと認識すべきこととなります。
 

3.電子取引
・保存データのタイムスタンプ・検索要件の緩和
 こちらは前述と同様となります。
 合わせて、売上高が 1,000 万円以下である方(小規模な事業者)について、
 税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合に、
 検索要件の全てが不要となり利便性向上となっております。
・電子取引における申告所得税及び法人税関連については、紙原紙による保存の廃止
 申告所得税及び法人税における電子取引の取引情報に係る電磁的記録について、
 その電磁的記録の出力書面等の保存をもってその電磁的記録の保存に代えることができる措置は、廃止されました。
 つまり一元管理のため原紙保管等していた対応ができなくなり、こちらがかなりの企業に影響する改正部分となります。
・電子保存義務化の2年宥恕処置(猶予期間)
 上記内容を急に対応できない企業が多くあるため、2年間の猶予期間を設けられております。
・不正があった場合の重加算税の加重措置の整備
 前述と同様となります。

また電子取引保存要件においては「真実性の要件」「可視性の要件」を満たす必要があります。

上記の通り、緩和し、電子保存しやすくなった点もありながら、
今までの保存方法から電子保管義務を満たす必要が発生し、各企業の対策が必要になる状況となっております。


少々長くなりましたので、今回はこちらで締めさせていただきます。
次回は、改正内容において、どのような対応が必要になるかについてお話させていただきます。

電子帳簿保存法関係の資料につきましては
以下国税庁ホームページにまとめてありますのでご確認頂きますようお願いいたします。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm

電子帳簿保存法改正について
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021012-095_03.pdf