企業でDXを実現するために、改めて一緒にDXの流れを見直してみましょう!第5回:(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み-その4-

みなさん、こんにちは。
期間が空きましたが、DX推進ガイドラインの読み直しも5回目となります。
本ブログを読んで少しでも興味を持たれた方は、1~4回のブログもご覧いただけると大変うれしいです。
※各回のリンクは下部参照

今回は、(1)DX推進のための経営のあり方、仕組みにおける「投資等の意思決定の在り方」について見直していきます。

DX推進ガイドラインの理想と現実の乖離がとても大きな部分となりますので、
実際の状況をお伝えしながら進めて行ければと思います。

《投資等の意思決定のあり方》について、DX推進ガイドラインでは以下記載があります。

4.DX推進のための投資等の意思決定において、
   ① コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか。
   ② 他方、定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか。
   ③ 投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか。
(出典:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン Ver.1.0 経済産業省)

順に「① コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか。」から見直していきましょう。

ビジネスに与えるプラスのインパクトは企業により様々ですが、総じて言えるのは
 ・新入社員のポジションで色々な業務を任せる事ができる
・24時間365日稼働可能(セキュリティやコストの課題はあり)
 ・自動化により空いた時間を何に使用するか決めてから進めることができる
の3点となります。

この中で「自動化により空いた時間を何に使用するか決めてから進めることができる」についてあまり考えずに
進めることが多いイメージですが、ここがしっかり考えられていないとDXの基本である
デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント
に繋がりません。

自動化する目的を工数削減や業務の移管からもう一歩先へ目を向け
 ・誰の時間を空けるか
 ・どこまで空けるか
 ・空いた時間で何をするか
を考えていくことで、どんな課題に向けた取り組みなのか、その取り組みが何をもたらすのかが明確になり、
経営者への強いコミットメントに繋がっていく足がかりになります。

と、理想的な話を並べてはおりますが、実際に話を聞いたり環境を見る限りでは、
多くの企業が経営者へのコミットメントを意識しておらず、自動化しているという結果だけを報告して進めています。

その結果として起きているのは、効果が検証されていないRPAロボットの増殖と保守工数の増加、
それに伴う開発陣の疲弊とスケールの迷走です。

しかし大事なのは、この結果を”失敗”や”悪い事”だと決めつけないことです。
次項でも触れますが、DXは”結果だけでなく検証や挑戦の意味合いが強い”取り組みです。

強いて悪い点があるとすれば、この結果を基に課題を抽出し改善する取り組みを企業として行えていない点だと私は考えます。
もし心当たりがある方は、課題がどこにあるのか今一度見直してみるのも良いかもしれません。

次に「② 他方、定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか。」を見直します。

これは経営者へのコミットメントを明確にしていけば自ずと見えてくる内容ではありますが、
DXの”結果だけでなく検証や挑戦の意味合いが強い点”ははっきりと伝える必要があります。

その理由として、唯々費用対効果を出したいのであれば、自動化はあまり効果的ではありません。

変革を目的とした自動化は企業にとっては新しい試みであり、その目的も企業によって様々であるため
費用対効果を出すために導入するのはその本質ではありません。

この本質を無視して進めてしまっては、本当にその企業にDXによる変革が必要なのか、
それともDX以前に進めなければならないデジタイズやデジタライズがあるのかが見えてこず、
求めていた結果とは違う着地をすることになってしまうでしょう。

実はこの内容も次項に繋がっていますが、多くの企業が紙での運用や企業間のデータ授受などに
課題を抱えている中でDXを進めているのが現状であり、
そんな中で挑戦を行うのは到底簡単ではありません。

そのため投資対効果や費用対効果に目がいってしまうのは自然なことですが、
昨今ではDXプロジェクトや他部署を利用したアセスメント的観点から
”求める結果にDXが必要か””DXを取り組む段階か”などを評価する取り組みが始まっています。

最後に「③ 投資をせず、DXが実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか。」
を見直します。

正直私は、この内容について答えを持ち合わせておりません。

大手企業でもいまだ紙やFAXが横行している現状で、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しようとしても、
DXによる変革が進んだマーケットのイメージが付かず、リスクマネジメントができません。

2025年以降加速すると言われている新規参入者による「新たなデジタル技術」に対抗すべき
競争力維持・強化が課題とされていますが、
それが何なのか、今できる事が何なのか、
各企業が地道に検証・検討していくしかないのが現状です。

結局のところ、経済産業省から公表されているDXレポートなどを見直しながら、
デジタイズ・デジタライズ・DXを行わないリスクを我々エンジニアを利用して考えてもらい、
変革への糸口を見つけると言った
地道な改善を繰り返していくことになりますが、
その地道な繰り返しに投資したか否かが未来に繋がるのではないか、
繋げるために企業の業務担当者と経営者、そしてエンジニアが今以上に手を取り合う必要があると私は感じています。

まとめとなりますが、
 ・DXに対して勘案する内部体制が構築されているか
 ・アウトソーシングに頼りその成果だけで結果を求めていないか
を見直す時期に差し掛かっているのではないでしょうか。

アセスメント観点からDXの必要性を考え、業務プロセス自体の抜本的見直しを実施し、
DXの取り組みを経営者へコミットメントするのはアウトソーシングされた企業やエンジニアでは
余程の能力が無い限り難しいでしょう。

しかしエンジニアの力なくして行うことも難しいため、役割を明確にし互いに協力することが大事です。

企業の風土や文化に近い部分を改善するBPR部隊と、DX観点から支援するエンジニアなど、
”依頼する””任せる”ではなく、双方協力し忌憚ない意見を言い合えるパートナーを探すことが一番大事かもしれません。


次回は、「DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力」を読み直していきたいと思います。

>>第6回予定:(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み-その5-

▼「企業でDXを実現するために、改めて一緒にDXの流れを見直してみましょう!」シリーズ
第1回:DX推進ガイドラインの構成
第2回:(1)DX推進のための経営のあり方-その1-
第3回:(1)DX推進のための経営のあり方-その2-
第4回:(1)DX推進のための経営のあり方、仕組み-その3-

ライター:伊藤 崇峰
2018年にDXを知り、RPA開発リーダーとして3年間様々なプロダクトで300以上の業務を自動化する。
自動化を行う中で培った幅広い知識・経験を活かすため、現在はDXコンサルタントやプリセールスを生業としながら、
DXアンバサダーとして活動している。